8-137 キリスト教の神は天主と直すべし その16
前回は小説「天使と悪魔」から同性結婚という、とんでもない問題にまで言及した。
久しぶりに神田のキリスト教老舗古書店「友愛書房」を訪ねた、と書いた。入手したものは二冊、「中国語聖書翻訳史」と「英和•和英語彙」である。前者はテーマにズバリの本で、著者は都田恒太郎さん、教文館から1974年に発行された。もう一冊は1830年のもので、メドハーストさんという人が書いたものの復刻版である。1830年と言えばおおむね180年前。そうでしょう180年前ですね確か、その英和和英の語彙集である。
ここで取り上げている英語で言うゴッドの、「神」という翻訳語は、明治初期ヘボンさんたちアメリカ系の宣教師等によって完成したものである、ともすでに書いた。明治元年は1868年で語彙集ができたのは、その前ということになる。ここから話は面倒になる。まずヘボンさんはこの語彙集を参考にしたと言う話がある。その上、メドハーストという人は前にも何度も紹介している柳父 章さんの本、「『ゴッド』は神か上帝か」によれば、神派ではなく上帝派なのである。
で、それなのにメドハーストさんが作ったと言われる語彙集では、「A god Ka-mi カミ」 となっているから話がややこしい。こうなると素人では歯が立たないが、柳父さんの本(岩波現代文庫、学術56)の120ページを少し書いてみよう。
「委員会(注、中国語聖書翻訳委員会)の意見は二つに分かれた。
委員長メドハーストは『上帝』を主張し、ミルンなど多数を占めるイギリスの宣教師がこれに同調した。これに対し、ブリッジマンは『神』を主張した。両者の意見は遂に折り合わず、God と Spirit の訳語だけを白く残した草稿をまとめて、1850年、会議を終え、以後、両者は別々の中国語訳聖書を出版した。」
その別々の聖書が今でも、中国語聖書上帝版神版として市販されているから驚いた、と以前書いた。ともあれ21世紀の現在でも、決着はついていないということになる。ところが日本語の聖書では、完全にすべて「神」であって、さしたる論争も世間に伝わらないまま、これが天下の誤訳であるとここで主張しているのである。
(続く)
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